特集:東京ELECTROCK STAIRSインタビュー vol.1
振付家KENTARO!!とダンサー横山彰乃、高橋萌登による対談。
ダンサーから振付家へ、振付家からダンサーへ質問しました。

撮影:Rui seki

Dancer to Choreographer
  • 10年前の自分と今の自分の違いや変わったこと
  • KENTARO!!:動き、音楽、言葉の蓄積によりそこで伝わる、伝えるボキャブラリーが増えた気がします。普通のことなのですが、クロスオーバーして反映されているので単純に言葉→歌詞やセリフでなく、動く事の変化に繋がるとかそういうイメージです。比喩の質が変わったと言いますか…。昔の違いで言うと本番が楽しい!という気持ちが今は余りなく、もう少しシリアスと言うか、踊りを通して表現したい物は何なのか考えてる気がします。

  • 普段気をつけていること(ダンスに限らず)
  • KENTARO!!:気をつけてること余りないですが、わりと綺麗な靴を履くようにしています。若干の手入れですね。ウェットティッシュで拭くくらいですが…。あとはお腹が緩いので、トイレの位置を把握するようにしています。

     
  • 何かルーティーン的なことはありますか?
  • KENTARO!!:一回ハマったらずっと同じものを食べたりします。例えば別にハマってもないんですが、王将ならチャーハンと餃子を毎回食べます。無茶苦茶美味いとか、そういうんじゃなくて、冒険しません。ダンスで言えば即興の練習はします。ただ何も考えずにはやらないようにしてます。ヒップホップならヒップホップ、ハウスならハウス、何でもないダンスならホントに得体の知れない動きとか。僕の場合、テクニック基礎が強いのでその辺は肯定して音に合わせてやります。

    left:KENTARO!! right:Moto Takahashi 

  • オリジナル音源の舞台も珍しい中、振付家が全て音楽を作成しているダンスカンパニーは世界的にもあまりないと思われますが、作品において音楽制作の割合(実質の作業時間と作品における音楽の位置付けの意味として)はどうですか?
  • KENTARO!!:振付より圧倒的に個人として大変です。作業も果てしないですね…振付は準備しなくても気分で出来たりしますが、音楽は感覚と共に考えないと全部同じ感じになってしまうし、作品の中で似たような曲だらけになってしまいます。作業時間も全体練習が別なら音楽の方が明らかに長いです。それでもなぜやるかと言うとオリジナリティの追求からです。音楽もオリジナルでありたいのです。もちろん影響受けたり、ハマってる音楽があればモチーフにしますし、サウンドとしてオリジナルと言うのは難しいですが、世界観や音数や展開、リズムとかは特に気にしてます。後は唄ものを書く場合、歌詞は大事で、ダンスと違う意味の歌詞ならばそれだけでダブルミーニングになるし、それが既成曲だと楽勝に出来てしまうのが面白くない。自分の作品では、自分の言葉で在りたいです。ただ必然性があれば既成曲は有りです。まだ作れなかった時はもちろん既成曲ばかりだし、トヨタコレオグラフィーアワード2008等の時期にカラオケダンスとかただのヒップホップとか言われた事で、いっそそれならオリジナルなら文句言えないだろうと思ったのもあります。

    KENTARO!! soundcloud

  • 今後の展望
  • KENTARO!!:作品で言えば、ピナバウシュくらいのスケールある作品をやりたいです。後は音源リリースして広がるとか、自分主導で大きいフェスティバルもやりたいです。具体的には活動で見せれるようやっていきます。あと踊れる男性メンバー、出演者募集してます。今年は7月吉祥寺シアター、12月シアタートラム、来年には海外ツアーもあると思うので是非。あと、関わってる人達に関わって良かったと思われるようにがんばります。

    Choreographer to Dancer
  • 今回の振付について
  • 高橋:今回は出演者がダンサーのみの出演なので容赦なく振りが難しいなという印象です。なんとなくですが、いつもより音楽のイメージや歌詞などを大切にしてそれに沿った振り付けをされている感じもします。あとは脱力が必要だったりとスキルアップをしないと踊れないような振りも散りばめられています。難解極まりないです。

    横山:KENTARO!!さんの振付(動き)はポップで見てる分にはあまり難解には見えないことが ありますが、実はすごく複雑で細やかに身体を使わないとその通りには体現できな い、 ということが結構ある気がします。今回の振付は(まだ全部ついてないので出来上 がってからすごく変わってるかもしれませんが)、 そういう、見ていて「簡単そう」みたいなのがほとんどなく、テクニカルなことが連なっている印象です。

    left:Ayano Yokoyama right:Moto Takahashi 

  • 継続してカンパニー作品に出演する事について
  • 高橋:継続しているというよりかは気づいたらこんなに何年も経っていたという感じの方が強いかもしれないです。沢山のことはありましたが今日までがあっという間でした。でも継続は力なりという言葉通りKENTARO!!さんのテイストを段々と修得してきて近年はそれをどう自分の踊りにするかも考えたりしています。あと長くいるとKENTARO!!さんの変化や、メンバーの変化を感じます。当たり前ですがみんなそれぞれ踊りだけでなくいろいろ進化しているなと思います。

    横山:もともと学生の頃から一つのダンスカンパニーに入りたくて、というのは、わたしが学生の頃はあまり一つのカンパニーに長年所属してるというダンサーが少ないように見えていてほとんどの人がオーディションごとにカンパニーを変え、人を変え、やってる印象でした。それが悪いわけではないけれど、新しい人の方が新鮮な味は出せますが、作家の動きや世界を深めていくのは(そういう作風であれば、ですが)積み重ねていかないと出せなかったり、わからないものでもあると思っています。新しい作家にどんどん出会っていくのも経験にはなるけど、一人の作家の元で自分を新しく更新していくことを最近は意識しています。例えば腕を一回まわす等、いつもある動きでも作品や振付の流れは当たり前に違うのでまわし方をいちいち見直して動きを構築したいと思ってはいますね、、できたら良いんですけど。

  • 自分が作るときとダンサーとして参加する時の違い
  • 高橋:あまり他の人の作品に出たことがないのでわからないですが、KENTARO!!さんの場合はとにかく振りを作るのが早いので自分で作る時よりも明らかに長く練習時間をとることができます。それは自分の作品の場合は、音楽や構成など他にも考えなくてはならない作業があるからというのもあり、ダンサーのみの場合は覚えて練習するということがメインなので、その分踊り込みができるなと創作活動をし始めて気づきました。作ってない分練習しろよと自分に対して思います。あとは作品の中での自分の在り方なども考えます。それと責任の重さや、良くも悪くも最終的に評価されるのが振付家なのでダンサーと振付家は立場や負荷が全然違うと思います。ダンサーというだけでなくダンサーと振付家の両方を経験しないとわからなかったことが沢山あります。

    横山:自分が作るときとダンサーとして参加するときは気持ちもやることも全然違っていて、東京ELECTROCK STAIRSでは完全にプレイヤーとしての気持ちでいます。技術面の難易度が高かったり、「なんじゃこの動き〜(解読不可能)」と思えるのがモチベーションに繋がってます。ただ、言われるがままにこなすのは面白くないと思う性格なので、KENTARO!!さんの作品では感情表出や細かいコンセプトを指示されないのが殆どなので(シーンによってはあることはたまにありますが)、自分で考えられる余地があり、わたしはやりやすいです。ここは笑うシーンだからこういう気持ちで笑え!みたいなこと言われないですし。台詞や歌うことがあるのも自分の作品ではほぼないのでダンサーとして東京ELECTROCK STAIRSに参加するときのある種の肝(努力すべきところ、、)でもあります。自分が作るときは今書いたようなプレイヤー思考は一旦置いているので「踊る」ことに集中できるのはだいぶ後になってきます。

  • 自作の時に意識していること
  • 高橋:最近は人の存在について意識します。関係性と言いますか、ソロだったら自分なのか違うものなのかとか存在してるのかしてないのかなど。作品の中での変化もありますが、キャラクター設定とも言えるかもしれません。あとは新しいものを生むのは難しいですができるだけこれまで見たことがないものを作りたいとは思っています。

    横山:音をすごく意識してます。といっても全部は作れないので素材を集めて編集したり、作れそうだなというのは作るように心がけてはいます。敢えて有名な曲を使う以外は誰かの曲ってバレたくないので普段からいろいろ聴くようにしています(マイナーすぎるCDを買うのがもう趣味です)。サンプリング的に抜き出して使うとかもやったりします。音作りをもっと自分でいろいろできるようになれれば良いんですけど。イメージに合ったものを探すより作れた方が早いと思うことの方が多いです。音楽はダンスを観ている状態でもやっぱり強いので使い方を間違えるとすごく説明的になりすぎたり音楽がリードしてるようになるので、敢えての時以外はできるだけそうならないように考えてます(でもBGM的に何でも良いようにはならないように)。良いなと思う映画とかの音の削り方がなるほどと思う事があるので、無音の状態の使い方を最近は気にしています。

  • 近い将来の目標(自分の活動でも可)
  • 高橋:やはり海外に通用するダンサーでありたいという思いがずっとあるので漠然とはしてますが、海外の有名なカンパニーのダンサーと肩を並べられるようにまずなりたいです。

    横山:好きな内容で踊ったり作ったりするだけで生活できるようになりたいと思っていたんですけど、もちろんその気持ちもありますが、良いダンスを踊る・作る、それを続ける、ことが目標です。それをもっと劇場でダンスを観たことない人だったりに観てもらえたら良いなと思います。来年か再来年大きいところで作品を作りたいと思ってます。東京ELECTROCK STAIRSではぜひツアーまわって欲しいです。その支えとなる情報ツールなり面白いことを考えられたらと思ってます。

  • 公演情報
  • 東京ELECTROCK STAIRS
    新作vol.14『いつかモンゴリと眠る』

    2017年2月15日(水) - 22日(水)
    会場:こまばアゴラ劇場

    開演時間:
    2月15日(水) 19:30
    2月16日(木) 19:30
    2月17日(金) 19:30
    2月18日(土) 15:00 / 19:00
    2月19日(日) 17:00
    2月20日(月) 19:30
    2月21日(火) 19:30
    2月22日(水) 17:00

    チケット:
    一般 3,000円 学生 2,500円
    当日 3,500円 (学生一般共に)
    リピーター 1,000円 (本公演2回目以降)

    予約:Crackersboat予約フォーム

    ∠ いつかモンゴリと眠る web site

  • TES 2017schedule
  • 2月15-22日
    新作vol.14『いつかモンゴリと眠る 』
    こまばアゴラ劇場

    7月 
    グループ・KENTARO!!ソロ含む3本立て(予定)ロングラン
    吉祥寺シアター

    12月 
    新作『このところひところ(仮)』
    シアタートラム

  • プロフィール
  • 東京ELECTROCK STAIRS

    KENTARO!!(振付/音楽)を中心に据え、純ダンスと超現実夢想的な世界を繰り広げるダンスカンパニー。2008年12月旗揚げ以降、数多くの作品を発表。オリジナル音源をまるごと作品に反映させ、国内のみならず海外でも高い評価を得ている。
    2013年にはNYで行ったショーケースがNY TIMESに取り上げられ称賛された。とりとめのない想いをダンスに滲ませ <何もなくても、突き抜ける> がモットーに日々を生きていく。

    ∠ 東京ELECTROCK STAIRS web site

    KENTARO!!

    HIPHOPを中心としたストリートダンステクニックをベースとしながらも、スタイル化されたものから離れた視点で感性を表現。音楽を唄もの・ダンスミュージック・映画音楽的なものまで自作でまるごと作り、言葉と共に作品に反映させている。ひらかれたマイノリティとして国内外でダンサー・振付家として幅広く活動し、ソロ・カンパニー共に高い評価を得ている。2008年横浜ダンスコレクションR「若手振付家のための在日フランス大使館賞」、トヨタコレオグラフィーアワード2008「オーディエンス賞」「ネクステージ特別賞」受賞。2010年「日本ダンスフォーラム賞」を受賞。

    KENTARO!! web site

    横山彰乃

    長野県生まれ。幼少よりモダンダンスを始める。2009年より東京ELECTROCK STAIRSメンバーとして全作品に出演。2016年女子だけのダンスグループ[ lal banshees ]立ち上げ。TOYOTA CHOREOGRAPHY AWARD2016ファイナリスト。

    横山彰乃 web site

    高橋萌登

    幼少よりクラシックバレエを始め、2011年より東京ELECTROCK STAIRSのメンバーとして国内外の公演に出演。 中高生のダンス部コーチも務める。2015年Rencontres Choregraphiques Internationales de Seine-Saint-Denis に招聘される。

    高橋萌登 web site

    ////
  • top